Pulse|AIの鼓動を読む。2025年4月16日版

AI Slash Pulseは、世界のAI潮流から実務に刺さる5本を厳選し、戦略と現場の「次の一手」を静かに照らします。2025年4月15日──この日、技術よりも設計思想と責任の輪郭が問われるニュースが重なりました。
社会に根を張るAI。その深層を、一緒に見ていきましょう。

1. OpenAI、非営利委員会を設立──“制御”は未来の競争力となる

https://openai.com/index/board-and-safety-updates

OpenAIが新たに独立した非営利委員会を設立。モデルリリースの判断基準も刷新され、自己複製性・隠蔽性・シャットダウン抵抗といった“制御不能リスク”が新たに評価項目に加わりました。

AIは使い方だけでなく、「止め方」も設計されなければならない時代へ。
進化に責任を伴わせるこの動きは、もはや倫理ではなく、社会における競争力の一部となり始めています。

2. NVIDIA、米国内でAIスーパーコンピュータの製造本格化

https://www.reuters.com/technology/artificial-intelligence/nvidia-says-working-with-partners-make-ai-supercomputers-us-2025-04-14

TSMC・Foxconnとの提携をもとに、NVIDIAは米国内でAIスーパーコンピュータの製造を開始。今後4年間で最大5,000億ドル規模のインフラ整備を見据えます。
AIがどれだけ進化しても、それを走らせる演算基盤がなければ実装は進まない。
見直されているのは「クラウドの先」ではなく、その土台がどこにあるのかという地政学的な設計図です。

3. Zhipu、GLMモデルをMITライセンスで完全公開──“使う”から“磨く”AIへ

https://github.com/THUDM/GLM

中国のZhipu(Z.ai)が、GLM-32Bおよび9Bの多層構成モデルをオープンソースで公開。推論用・熟考用モデルなども含まれ、商用利用可能なMITライセンスで展開されています。

APIで使う時代から、自社内で最適化し、磨く時代へ。

モデルが開かれるということは、「誰もが基盤技術に手を入れられる自由と責任を持つ」ということ。
次の競争は、“使い方”ではなく、“使いこなし方”の深度に現れます。

4. Kling 2.0が到来──生成AI映像に“構成力”が宿る

https://www.kuaishou.com/news/2025/kling-2.0-launch

Kuaishouが発表した映像生成AI「Kling 2.0」は、動きの自然さ、物語性、画面の統一感を高精度で再現。
映像生成AIが、いよいよ「構成力」を伴って表現を刷新するフェーズに入りました。
広告、教育、医療、都市設計──1枚の画像では伝えきれない複雑な価値や感情を、映像で生成できるようになったとき、何が変わるのか。
その問いを突きつける技術革新です。

5. 米中摩擦がAI・EVサプライチェーンを直撃

https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-04-15/china-curbs-rare-earth-exports-impacting-us-ai-chip-supply

中国がレアアース・グラファイトの対米輸出を制限。米国ではAIチップやEV製造の供給網に早くも影響が出始めています。
生成AIや自動運転の裏には、常に“素材”がある。
どれだけ先端でも、その土台となる資源と物流が揺らげば、テクノロジーは止まる。
今、AIは思想やアルゴリズムだけでなく、鉱物と海路の上にも立っています。

編集後記|「誰が設計し、誰が支えるのか」が問われた日

本日の5本は、技術そのものではなく、それをどう設計し、どう支え、どう責任を持つかに重心が置かれていました。
生成AIが社会インフラになるほど、構造・供給・倫理──その“土台設計”が戦略の本質になっていきます。
AIの鼓動とは、技術が鳴らす音ではなく、社会が応答する揺れそのものなのかもしれません。

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