いまAIは第4世代へ|進化の本質と、社会が直面する再設計

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はじめに|変化に名前を与えるということ

いま、私たちは明確に「AIの第4世代」に突入しています。
それは、“くるかもしれない未来”ではなく、すでに日常と実務の只中に入り込んでいる現実です。
記憶し、観察し、横断的に文脈を理解し、先回りして提案する──

AIは、ただのツールではなく、連続した存在として私たちと関係を持ち始めています。
このような変化を前に、もはや「生成AI」という言葉では説明が追いつかなくなっています。
その変化に言葉を与えるとすれば、「第4世代AI」が最もふさわしいでしょう。

本稿では、AIの進化を「世代」というフレームで捉え直し、
この転換点における技術・社会・意思決定への影響を深掘りしていきます。

AIの4つの世代|進化の地図を描き直す

第1世代:ルールベースAI(〜1990年代)

  • 明示的なルール(if/then)で構築された初期AI
  • 例:エキスパートシステム、初期の医療診断支援
  • 特徴:人が決めた枠の中でしか動けない

第2世代:機械学習AI(2000年代〜)

  • 統計手法によるパターン学習が可能に
  • 例:スパムフィルタ、広告ターゲティング、信用スコア
  • 特徴:大量のデータで“経験”から学ぶが、意味や背景は理解しない

第3世代:ディープラーニングAI(2012年〜)

  • ニューラルネットの進化で画像・音声・自然言語処理が飛躍
  • 例:AlphaGo、GPT-3、BERT、音声アシスタントなど
  • 特徴:「見る・聞く・話す」は得意だが、対話は断片的

第4世代:記憶・文脈・エージェント化(2024年〜)

  • GPT-4 with Memory、Gemini 1.5 Pro、Claude 3 Opus などが代表例
  • 特徴:AIが“覚えていて”“気づき”“行動提案してくる”
  • 製品例:Copilot、Notion AI、Rabbit R1、Meta AI Glassesなど

なぜ今、「第4世代」と呼ぶ必要があるのか

この言葉が求められているのは、技術的な進化の説明が追いつかなくなっているからです。

● 記憶と文脈の保持

  • OpenAIのChatGPT Memoryは、過去の会話や好みを記憶 (参考:https://openai.com/blog/chatgpt-memory)
  • Gemini 1.5 Proは100万トークン以上の入力文脈を維持し、長期会話・ドキュメント横断に対応 (参考:https://deepmind.google/discover/blog/gemini-15)

● 複数モード・複数アプリ連携

  • Claude 3 Opusは画像・コード・長文をまたいで理解 (参考:https://www.anthropic.com/news/claude-3-family)
  • Microsoft CopilotはWord・Excel・Teamsなどを横断して業務を補助 (参考:https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-copilot)

● AIが“意志”を持つように感じる体験

  • Metaの「AI Glasses」はユーザーの視覚・会話履歴をベースにしたリアルタイムエージェント構築へ (参考:https://about.fb.com/news/2025/03/meta-ai-glasses-assistant)

このように、「どこで誰とどう関わったか」を踏まえて行動してくるAIが生まれています。

これはもはや、ツールの域を超えた存在との関係構築です。

社会・組織が直面する“関係性の再設計”

AIが高度化しても、本質的な問いは「どう使うか」にあります。

● 組織は「判断」の構造をどう設計するか?

  • AIの出す提案を鵜呑みにするのか、比較するのか、補完するのか
  • 経営層は“委ね方の作法”を持たないと、組織の意思決定精度が下がるリスクも

● 現場はAIと“共に働く文化”をどう築くか?

  • Copilot導入企業では「人間のKPI」自体が見直されている(例:提案業務の役割再定義)
  • 成果ではなく「活用・応答・改善のサイクル」こそが評価軸になり始めている

● 社会と生活は「何をAIに任せるか」の選択を迫られる

  • 教育:検索能力か、問いの立て方か
  • 医療:診断の補助か、診断そのものか
  • 暮らし:スケジューリングか、時間の過ごし方か

要点整理

  • 第4世代AIとは、「記憶」「文脈理解」「行動提案」が統合されたフェーズ
  • 単なる生成ではなく、“連続した存在”として私たちと接し始めている
  • このフェーズでは、「任せ方」「距離感」「意思決定構造」が問われる
  • 社会、組織、教育の設計思想そのものがアップデートを求められている

考察と展望|「選択肢を出すAI」とどう向き合うか

AIが“考える”ように見えることが増えてきました。
だがそれ以上に重要なのは、AIが「選ばせてくる」ようになっているという事実です。
この構図は、私たちの意思決定にも大きな影響を与え始めています。

  • AIが提案する中から選ぶ
  • AIが過去の選択を踏まえて調整する
  • AIがまだ気づいていない視点をユーザーが補う

この関係性の再設計が、第4世代AIにおける本質的課題です。
AI Slashは、そうした関係性の変化をただのトレンドとしてではなく、社会設計・組織設計・人間理解という“深層の問い”として扱い続けることを使命としています。
未来は、静かに形を変えていく。
その波のかたちに、言葉を与えることから始めましょう。

参考・出典

・ChatGPT Memory
https://openai.com/blog/chatgpt-memory
・Gemini 1.5 Pro
https://deepmind.google/discover/blog/gemini-15
・Claude 3 Opus
https://www.anthropic.com/news/claude-3-family
・Microsoft Copilot
https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-copilot
・Meta AI Glasses
https://about.fb.com/news/2025/03/meta-ai-glasses-assistant
・IDC Generational Shift Report
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=US51199925

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