AI Slash Pulseは、世界のAI潮流から実務に刺さる5本を厳選し、戦略と現場の「次の一手」を静かに照らします。
週末版では、日々のニュースを一歩引いた視点で捉え、今週AIがどこへ向かっていたのか──構図と兆しを浮かび上がらせます。
昨日(4月19日)の注目ニュース|その場で動いた5つの兆し
1. Pitt大学 × Leidos、AIでがんと心疾患の早期発見へ
AIによる診断支援で、早期発見と医療格差の是正を目指す共同研究が始動。
1,000万ドル規模の5年プロジェクトが、“公共医療 × AI”の実装フェーズを加速させます。
2. 英国、AIで都市計画をデジタル化──「Extract」導入を推進
https://www.thetimes.co.uk/article/ai-planning-tool-extract-program-angela-rayner-2nnmgdshd
手書き地図や設計メモを40秒でデジタル変換。
AIの行政実装が、都市計画と住宅政策の現場に入り始めました。“手続き改革”としてのAI活用が見えてきます。
3. Microsoft、イスラエル契約巡り社内抗議拡大
https://www.theguardian.com/technology/2025/apr/18/microsoft-ai-israel-gaza-war
イスラエル軍向けAI契約を巡り、社内の抗議が激化。辞職やイベント妨害も。
AI企業にとっての倫理的距離感とレピュテーションリスクがあらためて浮き彫りに。
4. OpenAI「o3」幻覚率の増加が明らかに

推論精度の向上と引き換えに、事実誤認の出力(幻覚)が増加。
精度だけではなく、「現場に耐えるAIとは何か」が再び問われています。
5. Lazada、AIによるEコマース変革を推進(タイ)
商品推薦・在庫管理に生成AIを活用。東南アジアの中小企業に力を与える動きが加速中。
“AIの恩恵を誰が受け取れるか”という問いが浮かびます。
今週の振り返り|構図を変えたニュース 3選
A. OpenAI「o3」発表──“扱える進化”をどう設計するか
https://openai.com/index/introducing-o3-and-o4-mini
注目の背景:
今週のハイライトでありながら、本質は“どれだけ賢いか”ではなく、“どう信頼されるか”にあります。
新モデル「o3」「o4-mini」は推論能力の前進と同時に、「幻覚率が高まっている」という報告も浮上。“すごいAI”から“使えるAI”へのハードルが、あらためて問い直されました。
この一手が、未来の軸を少しずらした。
LLMにとって性能はもはや必要条件。
本当に問われているのは、社会のなかで設計可能か、制御可能かという“実装に耐える力”です。
B. Microsoft BitNet──“誰でも動かせるAI”というインフラ思想
注目の背景:
GPU不要・省電力・MITライセンス──。
従来の巨大モデル偏重から一転、Microsoftは「普通のマシンで使えるAI」という選択肢を提示しました。
軽量LLM BitNetは、インフラとしてのAIの在り方を根本から問い直すモデルです。
この一手が、未来の軸を少しずらした。
“高性能AI”ではなく、“誰でも扱えるAI”。
その方向転換は、エッジ・教育・医療・途上国市場すべてに恩恵をもたらす可能性を持っています。
C. Zhipu、GLMを完全オープン化──“借りるAI”から“育てるAI”へ
https://www.techinasia.com/news/chinese-ai-startup-zhipu-plans-ipo-open-sources-32b-models
注目の背景:
中国発の大規模モデルが、MITライセンス・商用利用可能という形で完全オープン化。
APIで借りる時代から、自社で最適化し、育て、内製する時代へ。
この開放は、グローバルな技術主権と活用自由度に新たな風を吹き込みました。
この一手が、未来の軸を少しずらした。
閉じたモデルではなく、開かれた基盤に未来を託す──。
AIとの関係性そのものが書き換わりつつある転換点でした。
編集後記|“進化するAI”と“実装できる社会”のあいだで
今週のAIは、進化のスピード以上に「社会に耐える設計とは何か?」を問いかけていました。
精度が上がっても、制御できなければ使えない。使える設計でも、倫理を伴わなければ受け入れられない。
AIの性能ではなく、“社会の器”が試され始めた週だった──その気配が静かに濃くなりつつあります。
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来週も、「今、何が静かに動いているか」をともに捉えていきましょう。
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