Pulse Weekly|AIの鼓動を読む。週末版|2025年4月20日

AI Slash Pulseは、世界のAI潮流から実務に刺さる5本を厳選し、戦略と現場の「次の一手」を静かに照らします。
週末版では、日々のニュースを一歩引いた視点で捉え、今週AIがどこへ向かっていたのか──構図と兆しを浮かび上がらせます。

目次

昨日(4月19日)の注目ニュース|その場で動いた5つの兆し

1. Pitt大学 × Leidos、AIでがんと心疾患の早期発見へ

https://www.axios.com/local/pittsburgh/2025/04/18/pitt-leidos-use-ai-to-fight-cancer-and-health-disparities

AIによる診断支援で、早期発見と医療格差の是正を目指す共同研究が始動。
1,000万ドル規模の5年プロジェクトが、“公共医療 × AI”の実装フェーズを加速させます。

2. 英国、AIで都市計画をデジタル化──「Extract」導入を推進

https://www.thetimes.co.uk/article/ai-planning-tool-extract-program-angela-rayner-2nnmgdshd

手書き地図や設計メモを40秒でデジタル変換。
AIの行政実装が、都市計画と住宅政策の現場に入り始めました。“手続き改革”としてのAI活用が見えてきます。

3. Microsoft、イスラエル契約巡り社内抗議拡大

https://www.theguardian.com/technology/2025/apr/18/microsoft-ai-israel-gaza-war

イスラエル軍向けAI契約を巡り、社内の抗議が激化。辞職やイベント妨害も。
AI企業にとっての倫理的距離感とレピュテーションリスクがあらためて浮き彫りに。

4. OpenAI「o3」幻覚率の増加が明らかに

StartupNews.fyi
OpenAI’s new reasoning AI models hallucinate more OpenAI's reasoning AI models are getting better, but their hallucinating isn't, according to benchmark results.

推論精度の向上と引き換えに、事実誤認の出力(幻覚)が増加。
精度だけではなく、「現場に耐えるAIとは何か」が再び問われています。

5. Lazada、AIによるEコマース変革を推進(タイ)

商品推薦・在庫管理に生成AIを活用。東南アジアの中小企業に力を与える動きが加速中。
“AIの恩恵を誰が受け取れるか”という問いが浮かびます。

今週の振り返り|構図を変えたニュース 3選

A. OpenAI「o3」発表──“扱える進化”をどう設計するか

https://openai.com/index/introducing-o3-and-o4-mini

注目の背景:

今週のハイライトでありながら、本質は“どれだけ賢いか”ではなく、“どう信頼されるか”にあります。
新モデル「o3」「o4-mini」は推論能力の前進と同時に、「幻覚率が高まっている」という報告も浮上。“すごいAI”から“使えるAI”へのハードルが、あらためて問い直されました。
この一手が、未来の軸を少しずらした。
LLMにとって性能はもはや必要条件。
本当に問われているのは、社会のなかで設計可能か、制御可能かという“実装に耐える力”です。

B. Microsoft BitNet──“誰でも動かせるAI”というインフラ思想

https://arstechnica.com/ai/2025/04/microsoft-researchers-create-super%E2%80%91efficient-ai-that-uses-up-to-96-less-energy

注目の背景:

GPU不要・省電力・MITライセンス──。
従来の巨大モデル偏重から一転、Microsoftは「普通のマシンで使えるAI」という選択肢を提示しました。
軽量LLM BitNetは、インフラとしてのAIの在り方を根本から問い直すモデルです。
この一手が、未来の軸を少しずらした。
“高性能AI”ではなく、“誰でも扱えるAI”。
その方向転換は、エッジ・教育・医療・途上国市場すべてに恩恵をもたらす可能性を持っています。

C. Zhipu、GLMを完全オープン化──“借りるAI”から“育てるAI”へ

https://www.techinasia.com/news/chinese-ai-startup-zhipu-plans-ipo-open-sources-32b-models

注目の背景:

中国発の大規模モデルが、MITライセンス・商用利用可能という形で完全オープン化。
APIで借りる時代から、自社で最適化し、育て、内製する時代へ。
この開放は、グローバルな技術主権と活用自由度に新たな風を吹き込みました。

この一手が、未来の軸を少しずらした。

閉じたモデルではなく、開かれた基盤に未来を託す──。
AIとの関係性そのものが書き換わりつつある転換点でした。

編集後記|“進化するAI”と“実装できる社会”のあいだで

今週のAIは、進化のスピード以上に「社会に耐える設計とは何か?」を問いかけていました。
精度が上がっても、制御できなければ使えない。使える設計でも、倫理を伴わなければ受け入れられない。
AIの性能ではなく、“社会の器”が試され始めた週だった──その気配が静かに濃くなりつつあります。

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Pulse Weeklyは、変化の兆しと構図を1週間分まとめてお届けするAI Slashの週末版。
来週も、「今、何が静かに動いているか」をともに捉えていきましょう。
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